2026年08月03日 平田 えり
継親が感じる「亡くなった親への嫉妬」は悪いことではない

比べてしまう自分を責めないでください
「写真を見るたびに苦しくなります。」
「子どもが『お母さんだったら』『お父さんだったら』と言うたびに、胸が締めつけられます。」
「亡くなった方に嫉妬するなんて、自分は冷たい人間なのでしょうか。」
私のご相談でも、このような声を耳にすることがあります。
けれど、この気持ちは決して珍しいものではありません。
むしろ、新しい家族を大切にしたいと思っているからこそ生まれる、ごく自然な感情なのです。
「亡くなった人」だからこそ比べてしまう
離婚後のステップファミリーでは、元配偶者との関係や面会交流など、現実の中で折り合いをつけていく場面があります。
一方、死別ステップファミリーでは、亡くなった親は家族の記憶の中で生き続けています。
時間が経つにつれて、つらかった出来事よりも温かい思い出が残り、「理想のお父さん」「理想のお母さん」として語られることも少なくありません。
子どもが悪気なく「お母さんのカレーはもっとおいしかった」「お父さんはこんなこと言わなかった」と話したとき、継親は「私は何をしてもかなわない」と感じることがあります。
相手はもうこの世にいない。
だからこそ、自分の気持ちを伝えたり、関係を築き直したりすることもできません。
その「どうしようもなさ」が、苦しさを大きくしてしまうのです。
嫉妬の裏側には「家族になりたい」という願いがある
「嫉妬」という言葉には、どこかネガティブな響きがあります。
しかし、その感情の奥を見つめると、そこには別の気持ちが隠れています。
「子どもに受け入れてほしい。」
「家族の一員として認めてもらいたい。」
「大切な存在になりたい。」
つまり、嫉妬の正体は、「愛されたい」「つながりたい」という願いなのです。
もし関心がなければ、比べることすらありません。
苦しくなるのは、それだけ家族との関係を大切に思っている証でもあります。
子どもは継親と亡くなった親を比べているわけではない
子どもが亡くなった親の思い出を話すとき、多くの場合、その目的は「継親を評価すること」ではありません。
「こんなことがあったんだよ。」
「この料理が好きだったんだ。」
「一緒に遊んだことを思い出した。」
それは、自分の大切な思い出を共有しているだけのことも多いのです。
ところが、継親は「比べられた」「否定された」と受け取ってしまうことがあります。
もちろん、そう感じる自分を責める必要はありません。
ただ、「子どもの目的は何だろう」と一歩立ち止まって考えてみると、見え方が少し変わることがあります。
「勝とう」としないことが関係を育てる
亡くなった親に勝とうとすると、苦しさは増してしまいます。
なぜなら、勝ち負けのある関係ではないからです。
亡くなった親は、その子にとってかけがえのない存在です。
そして、今一緒に暮らしている継親も、これからの日々をともに積み重ねていく、かけがえのない存在になっていけます。
役割は違います。
思い出も違います。
だからこそ、同じ土俵で比べる必要はないのです。
パートナーの支えが欠かせない
このような葛藤は、継親一人で抱え込むものではありません。
実親であるパートナーには、子どもの悲しみに寄り添うだけでなく、継親の不安や孤独にも目を向ける役割があります。
例えば、
「いつもありがとう。」
「あなたがいてくれて助かっているよ。」
「子どもも少しずつ安心してきているね。」
そんな一言があるだけで、継親は「この家族の一員なんだ」と感じられることがあります。
死別ステップファミリーでは、子どものグリーフケアが注目されがちですが、継親にもまた、支えが必要なのです。
嫉妬は消すものではなく、理解するもの
「嫉妬しないようにしよう。」
そう思えば思うほど、気持ちは消えません。
大切なのは、「私は今、家族になりたいと思っているから苦しいんだ」と、自分の感情を理解することです。
感情には良い・悪いはありません。
その感情をどう受け止め、どう行動するかが大切なのです。
比べることよりも、今日一緒に笑えたこと。
昨日より少し会話が増えたこと。
そんな日々の積み重ねが、やがて「この人は私の家族」と思える関係を育てていきます。
おわりに
亡くなった親への嫉妬は、継親として失格だから生まれる感情ではありません。
それは、「この家族を大切にしたい」「居場所を築きたい」という切実な願いの裏返しです。
だからこそ、その感情を否定する必要はありません。
まずは、「そう感じてもいい」と自分に許可を出してあげてください。
安心して気持ちを話せる場所や、同じ経験をした人とのつながりがあることで、その苦しさは少しずつ和らいでいきます。
M-STEPは、継親も子どもも、そして実親も、それぞれの気持ちが尊重される家族づくりを応援しています。


