2026年08月21日 平田 えり
子連れ恋愛で同居する前に考えてほしいこと――「好きな人」と「子どもにとって安全な人」は同じですか?
NPO法人M-STEP理事長で、カウンセラーの平田えりです。
今回は、子連れ恋愛と子どもの安全について書きたいと思います。
というのも私自身、継子の立場でもあり、継母でもあり、実親の立場でもあり、ステップファミリーにおけるセメントベビーでの立場以外は、全ての立ち位置での経験があるからです。
先日、横浜市で、交際相手の2歳の男の子に暴行を加えたとして36歳の男性が逮捕され、男の子がその後亡くなるという、大変痛ましい事件が報じられました。
報道によれば、男性は男の子の頬を殴り、肩をつかんで起こし、体を揺さぶったことを認めているとされています。
交際相手の2歳長男の顔など殴った疑いで男逮捕 長男は死亡 横浜市
こうした事件が起きる度に
「事件が起きる前に、私たちにできることはなかったのだろうか」
と考えます。
虐待は、決して許されるものではありません。けれど、事件を起こした人を「ひどい人間だ」と非難するだけでは、次の子どもを守ることにはつながりません。
子連れ恋愛をするとき、私たち大人が何を見て、何を考え、どこで立ち止まればいいのか。
一緒に考えてみたいと思います。
子連れ恋愛そのものが悪いのではありません
最初にお伝えしたいことがあります。
私は、
「子どもがいるのだから恋愛してはいけない」
とは思っていません。
離婚をしても、死別をしても、ひとり親になっても、誰かを好きになっていい。
支えてくれる人を求めてもいい。
もう一度、幸せな家庭をつくりたいと思ってもいいのです。
ただ、子どもがいる恋愛には、大人同士だけの恋愛とは違う視点が必要になります。
それは、
「私はこの人が好き」という気持ちと、「この人は私の子どもにとって安全な人か」という判断を分けて考えることです。
「私に優しい人」=「子どもに安全な人」とは限りません
恋愛中は、相手の優しい部分をたくさん見るでしょう。
話を聞いてくれる。
寂しいときにそばにいてくれる。
「子どものことも大切にするよ」と言ってくれる。
一人で子育てを頑張ってきた人にとって、その言葉がどれほど心強いか、私にも分かります。
「この人となら家族になれるかもしれない」
そう思うこともあるでしょう。
でも、ここで一度考えてみてください。
恋人として素敵な人であることと、子どもと安全に暮らせる人であることは同じでしょうか。
私は、必ずしも同じではないと思っています。
見てほしいのは「優しいとき」より「怒ったとき」
子連れ恋愛をしている方に、ぜひ見てほしいことがあります。
それは、
相手が自分の思い通りにならないとき、どんな人になるのか。
子どもとの生活は、思い通りにならないことの連続です。
泣く。
騒ぐ。
食べない。
寝ない。
片づけない。
同じことを何度言っても繰り返す。
急いでいるときに「イヤ!」と言う。
それが子どもです。
そんなとき、交際相手はどうするでしょうか。
怒鳴る。
威圧する。
無視する。
物に当たる。
「言うことを聞け」と力で従わせようとする。
あるいは、
「まだ子どもだから仕方ないね」
と、自分の感情をコントロールできるでしょうか。
恋愛では見えなかったその人の一面が、子どもとの生活では見えてくることがあります。
だから私は、
「優しい人?」だけではなく、「怒ったときにも安全な人?」と考えてほしいのです。
「しつけ」と「支配」を混同しない
ステップファミリーの相談を受けていると、新しいパートナーが、
「自分も父親なんだから」
「自分も母親なんだから」
と、早い段階から子どものしつけを担おうとするケースがあります。
でも、子どもからすれば、親が恋人として選んだ相手が、その日から突然「お父さん」「お母さん」になるわけではありません。
信頼関係ができるまでには時間が必要です。
私は、
最初から親になろうとしなくていい
と思っています。
まず必要なのは、
「この人と一緒にいても怖くない」
「この人の前では自分でいても大丈夫」
と子どもが思えること。
つまり、
「親」になる前に「安心できる大人」になることです。
子どもの「嫌だ」「怖い」を打ち消さないで
もう一つ、子連れ恋愛で大切にしてほしいことがあります。
子どもが、
「嫌だ」
「怖い」
「あの人と二人になりたくない」
と言ったときです。
もちろん、子どもが交際相手を嫌がったからといって、その人が危険だと決めつけることはできません。
親を取られるような寂しさかもしれません。
離れて暮らす実親への思いかもしれません。
新しい環境への戸惑いかもしれません。
だからこそ、
「そんなこと言わないの」
「いい人なんだから」
「あなたのことも大切にしてくれているのよ」
と否定するのではなく、
「どうしてそう思ったの?」
と聞いてあげてください。
そして、幼い子どもは言葉で説明できないことがあります。
急に眠れなくなった。
食欲が落ちた。
赤ちゃん返りが始まった。
交際相手が来ると表情が変わる。
親から離れなくなった。
そうした変化があれば、少し立ち止まってみてください。
子連れ恋愛では「同居を急がない」という選択を
子連れ恋愛では、
「家賃も節約できるから」
「子育ても手伝えるから」
「ずっと一緒にいたいから」
「早く本当の家族になりたいから」
と、同居へ進むことがあります。
けれど、デートと共同生活はまったく違います。
一緒に暮らせば、
お金。
家事。
生活習慣。
子どもの泣き声。
子どもの反抗。
教育方針。
しつけ。
実親と新しいパートナーの役割。
さまざまな違いが見えてきます。
だから、
「好きだから一緒に暮らす」だけではなく、「一緒に暮らしたとき、子どもが安心して生活できるか」を考えてほしい。
同居や再婚は、急がなくていいのです。
子どもは、親の恋愛相手を選べません
私は、ここが一番大切だと思っています。
大人には選択肢があります。
誰と付き合うかを選べます。
誰と暮らすかを選べます。
関係を終わらせることもできます。
でも、小さな子どもにはその選択ができません。
親が選んだ人が、子どもの生活の中に入ってきます。
だからこそ、大人には責任があります。
「私がこの人を好きか」
だけではなく、
「この人のそばで、私の子どもは安心して子どもでいられるか」
を考える責任です。
「何となく嫌な感じ」を無視しないでください
カウンセリングをしていると、
「今考えると、最初から少し違和感がありました」
という言葉を聞くことがあります。
怒ると怖かった。
店員さんへの態度が気になった。
子どもへの言い方がきつかった。
束縛が強かった。
すぐに機嫌が悪くなった。
でも、
「普段は優しいから」
「私のことを愛してくれているから」
「せっかくここまで付き合ったから」
と、その違和感を小さくしてしまった。
人間関係では、すべての違和感が危険を意味するわけではありません。
でも、
子どもの安全に関する違和感は、確認してから前へ進んでも遅くありません。
「考えすぎだったね」で終わるくらい慎重でいい。
私はそう思っています。
家族になることを急がなくていい
ステップファミリーは、結婚した日から突然「家族」になるわけではありません。
大人同士にも時間が必要です。
子どもと継親にも時間が必要です。
きょうだいになる子ども同士にも時間が必要です。
家族になるまで、3年かかってもいい。
5年かかってもいい。
もっと時間がかかってもいい。
家族になるスピードは、それぞれ違っていいのです。
「普通の家族にならなければ」
「早くパパになってもらわなければ」
「子どもにも好きになってもらわなければ」
そんなふうに急がなくても大丈夫です。
まずは、
安心して一緒にいられる関係をつくること。
そこから始めてほしいと思います。
問題が起きてからではなく、「迷っているとき」に相談してください
カウンセリングというと、
「大きな問題が起きた人が行くところ」
と思われるかもしれません。
でも、本当は違います。
「この人と再婚して大丈夫かな」
「同居を始めようか迷っている」
「交際相手の子どもへの接し方が少し気になる」
「子どもがパートナーを嫌がっている」
「パートナーのしつけが厳しすぎる気がする」
そんな段階で相談していいのです。
むしろ私は、
何かが起きる前に相談してほしい
と思っています。
一人で考えていると、「私が気にしすぎなのかな」と自分の違和感を打ち消してしまうことがあります。
第三者に話すことで、
「何が不安なのか」
「何を確認すればいいのか」
「今、同居するべきなのか」
「子どもの気持ちをどう聞けばいいのか」
が整理できることがあります。
M-STEPでは、再婚・離婚、夫婦関係、ステップファミリーなど、家族に関するさまざまなご相談をお受けしています。
私自身も、ステップファミリーの当事者として、そして長年ステップファミリーの相談に関わってきたカウンセラーとして、一緒に考えさせていただきます。
恋愛を急がなくていい。
同居を急がなくていい。
再婚を急がなくていい。
そして、
子どもの安全に関する違和感を、急いで消さなくていい。
大人が幸せになることと、子どもが安心して暮らせること。
どちらか一方ではなく、その両方を大切にできる家族を、一緒に考えていきましょう。


