2026年08月26日 平田 えり
子どものせいにする前に
――ステップファミリーは夫婦関係から立て直す
「再婚してから、子どものことで喧嘩ばかりです」
ステップファミリーのご相談では、そんなお話を聞くことがあります。
継親は、
「もう少しちゃんとしつけてほしい」
「どうして私ばかり我慢しなければいけないの?」
「結局、あなたはいつも子どもの味方だよね」
と感じる。
一方、実親は、
「そんなに子どもを否定しないでほしい」
「もう少し子どもの気持ちを理解してほしい」
「私の子どもを嫌っているの?」
と感じる。
最初は小さな違いだったはずなのに、少しずつ積み重なり、
「あなたの子どものせいで、私たち夫婦はうまくいかない」
というところまで来てしまうことがあります。
でも、本当にそうなのでしょうか。
子どもの問題に見えていることの中に、実は実親と継親の関係の問題が隠れていることがあります。
「子どもの問題」が夫婦喧嘩になる理由
初婚家庭でも、子育てについて夫婦の意見が違うことはあります。
しかしステップファミリーの場合、そこにもう一つ難しさがあります。
実親と継親では、子どもとの関係のスタート地点が違うということです。
実親には、子どもと過ごしてきた長い時間があります。
赤ちゃんの頃から知っていることもあるでしょう。
離婚や死別など、家族の大きな変化を一緒に乗り越えてきた場合もあります。
一方、継親にはその時間がありません。
結婚したからといって、その日から同じ親子関係が生まれるわけではないのです。
ところが生活が始まると、
食事、片づけ、生活時間、ゲーム、スマートフォン、勉強、言葉遣い、お金、門限など、さまざまな場面で価値観の違いが出てきます。
そこで継親が注意すると、実親は、
「そんな言い方をしなくても」
と子どもを守りたくなる。
すると継親は、
「私だけ悪者にされる」
と感じます。
こうして、
子どもの行動の問題だったものが、夫婦の問題へと変わっていくのです。
継親の「子どもを何とかして」の奥にあるもの
継親が、
「あなたの子どもを何とかして」
と言ったとき、言葉だけを受け取ると、実親はとても傷つくと思います。
「私の子どもを否定された」
と感じるからです。
でも、その言葉の奥には、
「この家の中に自分の居場所がない」
「私の気持ちは誰も分かってくれない」
「私はいつも後回し」
「家族になろうと頑張っているのに報われない」
という孤独感が隠れていることがあります。
つまり、子どもへの怒りに見えて、
本当はパートナーに分かってほしい気持ち
なのかもしれません。
実親の「子どもを守りたい」の奥にも気持ちがある
反対に、実親が継親の注意やしつけに敏感になることもあります。
それも、
「子どもを甘やかしている」
だけとは限りません。
離婚や死別などを経験した子どもに、
「これ以上つらい思いをさせたくない」
という気持ちがあるかもしれません。
「自分の選んだ再婚によって、また子どもを傷つけてしまったらどうしよう」
という罪悪感を抱えていることもあります。
だから継親が子どもを叱ると、必要以上に子どもを守ろうとしてしまう。
すると今度は継親が、
「自分だけが部外者だ」
と感じます。
お互いに相手を傷つけようとしているわけではないのに、結果として関係が悪くなっていくことがあるのです。
実親に必要なのは「橋渡し」
ステップファミリーにおいて、実親にはとても重要な役割があります。
私はそれを、
「橋渡し役」
と考えています。
継親に、
「今日からあなたも親なんだから、ちゃんとしつけて」
と丸投げしない。
反対に、
「あなたは本当の親じゃないんだから黙っていて」
とも言わない。
子どもには、
「この人の言うことを親だと思って聞きなさい」
と強制するのではなく、
「あなたの気持ちも聞く。でも、パートナーの気持ちも大切にしたい」
と伝える。
そして継親にも、
「子どものことだから私が全部決める」
ではなく、
「一緒に暮らしているあなたの気持ちも聞かせて」
と伝える。
どちらかを選ぶのではなく、二つの関係をつないでいく。
それが実親の大切な役割です。
継親は「親になる」ことを少し休んでもいい
夫婦関係が悪化しているとき、継親がさらに頑張って親になろうとすると、関係が悪くなることがあります。
そんなときは、一度役割を戻してもいいのです。
「親にならなければ」から、「安心して一緒に暮らせる大人になる」へ。
特に再婚して間もない時期は、重要なしつけや子どもへの注意は、まず実親が中心になる。
継親は、
挨拶をする。
一緒に食事をする。
好きなものを知る。
困ったときに少し手を貸す。
そんな小さな関係づくりから始めてもいいのです。
親子関係は、婚姻届を出した日に完成するものではありません。
子どもを夫婦喧嘩の中に入れない
そして、もう一つとても大切なことがあります。
実親と継親が不仲になったとき、子どもを二人の間に入れないことです。
「あなたもあの人がおかしいと思うでしょう?」
「お母さんには内緒にしてね」
「新しいお父さんの言うことなんて聞かなくていい」
こうした言葉によって、子どもは大人同士の問題を背負うことになります。
子どもを伝書鳩にすることも避けたいところです。
「お母さんにこう言っておいて」
「○○さんに聞いてきて」
ではなく、大人同士の問題は大人同士で話す。
子どもに、
「どちらの味方になるか」
を選ばせないことが大切です。
「子どもと私、どっちが大切?」にしない
ステップファミリーでは、ときに、
「結局、あなたは子どものほうが大切なんでしょう?」
という言葉が出てくることがあります。
でも、これは比較するものではありません。
親子関係と夫婦関係は、役割の違う大切な関係です。
実親が子どもを大切にすることと、パートナーを大切にすることは両立できます。
そして継親にも、
「子どもより私を選んで」
ではなく、
「私との関係も大切にしてほしい」
と伝えていいのです。
この言い換えだけでも、話し合いの方向が変わることがあります。
「あなたの子」ではなく「私たちが困っていること」
夫婦関係が悪くなったときに意識してほしい言葉があります。
「あなたの子どもが問題」
ではなく、
「私たちは今、このことで困っている」
と話すことです。
「あなたの子どもは片づけない」
ではなく、
「家の中の片づけについて、二人でルールを考えたい」
「あなたの子どもは態度が悪い」
ではなく、
「お互いが嫌な気持ちにならない話し方を考えたい」
主語を「あなた」から「私たち」に変える。
それだけでも、相手を責める会話から、問題を一緒に解決する会話へ変わっていきます。
まず夫婦で決めてほしいこと
子どもを交えた家族会議をする前に、実親と継親の二人で確認してほしいことがあります。
「私たちは、どんな家庭にしたい?」
「継親はどこまで子育てに関わる?」
「叱る役割は誰が担う?」
「子どもとの時間と夫婦の時間をどうつくる?」
「元配偶者や別居親との関係をどう考える?」
「お金や家事をどう分担する?」
「意見が違ったとき、子どもの前ではどうする?」
すべて同じ意見になる必要はありません。
大切なのは、
違いがあることを前提に、二人のルールをつくることです。
ただし「ステップファミリーだから」で済ませてはいけないこともある
ここは大切なので付け加えておきます。
夫婦の不仲をすべて、
「ステップファミリーだから難しい」
と考えないでください。
暴力、威圧、脅し、人格否定、過度な束縛、経済的な支配などがある場合は、単なる夫婦のコミュニケーションの問題とは分けて考える必要があります。
「家族になるために我慢しよう」
で解決しようとしないでください。
安全を優先し、必要に応じて専門機関への相談を検討することも大切です。
子どもを変える前に、大人同士の関係を整える
ステップファミリーで問題が起きると、どうしても、
「子どもをどうしたらいい?」
というところから考えがちです。
でも、その前に見てほしいものがあります。
実親と継親は、お互いの気持ちを話せていますか?
子育ての相談だけではなく、
「寂しかった」
「味方になってほしかった」
「頑張っていることを分かってほしかった」
「子どもを否定されたようで悲しかった」
そんな気持ちを話せているでしょうか。
ステップファミリーの土台になるのは、大人同士の関係です。
だから、
子どもを変える前に、大人同士の関係を整える。
二人だけでは同じ喧嘩を繰り返してしまうなら、カップル・夫婦カウンセリングなど、第三者を入れて整理する方法もあります。
家族の中に悪者をつくらない。
子どもに夫婦の問題を背負わせない。
そして実親も継親も、一人で頑張らない。
ステップファミリーは、「結婚したら家族の完成」ではありません。
結婚してから、それぞれに合った家族の形をつくっていく。
そのためにも、まず大人二人が同じ方向を向ける関係を、少しずつつくっていってほしいと思います。


