2026年09月23日 平田 えり
ステップファミリーで「足りないもの」ばかり気になっていませんか?

欠乏の心理学から考える、継親・実親・子どもの心と家族の幸せ
「継子がなかなか懐いてくれない」
「パートナーは自分よりも子どもを優先している」
「再婚したのに、思い描いていた家族になれない」
子連れ再婚をした家庭、いわゆるステップファミリーでは、このような悩みを抱えることがあります。
新しい家族と幸せになりたいと思って再婚したはずなのに、なぜか満たされない。自分だけが我慢しているように感じたり、パートナーや子どもに不満を抱いたりすることもあるでしょう。
こうした気持ちを理解するヒントの一つが、「欠乏の心理学」です。
今回は、ステップファミリー特有の家族構造にも目を向けながら、継親・実親・子ども、それぞれが抱える欠乏感について考えてみたいと思います。
1.欠乏の心理学とは? 足りないものに心が奪われる
欠乏の心理学とは、お金や時間など、何かが不足している状態が人間の思考や行動に与える影響を研究したものです。
何かが足りないと感じると、人はその不足しているものに注意を集中させ、ほかの大切なことが見えにくくなる場合があります。
これを「トンネリング」と呼びます。
この考え方は、ステップファミリーにおける愛情や承認への欲求を理解するうえでも、一つのヒントになります。
例えば、継親が「継子から親として認めてもらえない」と感じている場合。
子どもが挨拶をしてくれたり、一緒に食事をしたり、日常生活の中で少しずつ関係が築かれていたとしても、「お父さん」「お母さん」と呼んでくれないことばかりが気になってしまうかもしれません。
すると、すでに育ち始めている信頼関係に気づきにくくなってしまいます。
ただし、欠乏感は必ずしも思い込みではありません。
実際にパートナーからの配慮や家庭内での居場所が不足している場合もあります。
大切なのは、足りないと感じているものが何なのかを丁寧に見つめることです。
2.継親が抱えやすい「愛情と承認の欠乏」
継親は、新しい家族の中で自分の居場所を見つけようと努力することがあります。
しかし、実親と子どもの間には、再婚以前から築かれてきた歴史や親子関係があります。
継親がどれほど努力しても、すぐに同じような関係を築けるわけではありません。
その結果、次のような気持ちが生まれることがあります。
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自分だけが家族の中で孤立している。
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継子に受け入れてもらえない。
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パートナーが自分の気持ちを理解してくれない。
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自分ばかりが家族のために頑張っている。
特に注意したいのは、継子からの愛情によって、自分が家族の一員であることを確かめようとしてしまうことです。
継親が愛情を注いだからといって、子どもが同じように愛情を返せるとは限りません。
子どもには、別居している実親への思いや、新しい家族関係に戸惑う気持ちがあるかもしれないからです。
継親が求めているものは、本当に継子からの愛情なのでしょうか。
もしかすると、パートナーからの感謝や、自分も大切にされているという安心感なのかもしれません。
継親の孤独や不安を、子どもからの愛情だけで埋めようとしないことが大切です。
3.実親が抱える「どちらも大切にしたい」という葛藤
実親にも、実親ならではの欠乏感があります。
再婚したパートナーを大切にしたい。一方で、自分の子どもにも寂しい思いをさせたくない。
その結果、パートナーと子どもの間に挟まれ、どちらにも十分なことができていないと感じる場合があります。
例えば、継親から「あなたはいつも子どもばかり優先する」と言われ、子どもからは「再婚してから私のことを大切にしてくれなくなった」と言われたとします。
実親は、どちらの気持ちにも応えようとして疲れ果ててしまうかもしれません。
しかし、ここで考えてほしいことがあります。
パートナーへの愛情と、子どもへの愛情は、競い合うものではありません。
そもそも、夫婦関係と親子関係は異なる関係です。
子どもを大切にすることと、パートナーを大切にすることを、どちらか一方の選択にしない工夫が必要です。
例えば、子どもと二人で過ごす時間を確保しながら、夫婦だけで会話をする時間も大切にする。
そして実親には、継親と子どもの関係づくりを支え、両者の気持ちを調整する役割があります。
すべてを完璧にこなす必要はありませんが、その役割を継親や子どもに任せきりにしないことが大切です。
4.子どもが抱える欠乏感を見落としていませんか?
ステップファミリーでは、大人の恋愛や再婚に注目が集まりやすい一方で、子どもの欠乏感が見落とされてしまうことがあります。
大人にとって再婚は、新しい人生への希望かもしれません。
しかし、子どもにとっては、それまで当たり前だった生活や親子関係が変化する出来事でもあります。
例えば、子どもは次のような気持ちを抱えることがあります。
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お母さんやお父さんと二人で過ごす時間が減ってしまった。
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新しい家族に遠慮して、自分の気持ちを言えない。
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別居している実親を大切に思うことを、悪いことのように感じる。
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新しい親を好きにならなければいけないと思ってしまう。
子どもが継親を避けたり、実親に甘えたりする行動の背景には、こうした不安が隠れている場合があります。
ただし、すべての子どもが同じように感じるわけではありません。年齢やこれまでの経験、別居親との関係などによっても異なります。
子どもが求めているのは、新しい家族の形に早く慣れることではなく、「家族の形が変わっても、自分は大切にされている」という安心感かもしれません。
そのためにも、子どもの気持ちを聞き、実親との時間や、必要に応じて別居親とのつながりを守ることが重要です。
5.欠乏感が強くなると、家族の中で誰かを責めてしまう
ステップファミリーの相談では、家族の誰かが悪いわけではないのに、誰かのせいにしなければ気持ちの整理がつかなくなることがあります。
継親は「子どもがわがままだから、夫婦関係がうまくいかない」と感じる。
実親は「パートナーが子どもを理解してくれないから、家庭が落ち着かない」と感じる。
子どもは「新しいお父さんやお母さんが来たから、今までの生活が変わってしまった」と感じる。
それぞれが、自分の失ったものや満たされていないものに意識を向けてしまうのです。
この悪循環を断ち切るためには、誰が悪いのかを探すだけでなく、それぞれが何を必要としているのかを理解することが重要です。
もちろん、暴力や虐待、継続的な威圧がある場合には、単なる気持ちのすれ違いとして扱わず、安全の確保を優先する必要があります。
6.ステップファミリーの欠乏感を和らげる3つの習慣
① 自分が本当に求めているものを知る
「継子に懐いてほしい」という気持ちの奥には、「家族の一員として認められたい」という願いがあるかもしれません。自分が何を必要としているのかを整理し、それを誰に、どのように伝えられるのか考えてみましょう。② すでに育っている関係にも目を向ける
③ 家族以外にも自分の居場所を持つ

7.「普通の家族」を目指すより、私たちらしい家族を育てる
ステップファミリーでは、初婚家庭と同じような家族関係を目指そうとして、かえって苦しくなることがあります。
「親なのだから、子どもを愛さなければならない」
「家族なのだから、みんな仲良くしなければならない」
「再婚したのだから、もう過去の家族のことを考えてはいけない」
こうした理想が、継親にも実親にも子どもにも、プレッシャーを与えてしまうことがあります。
しかし、ステップファミリーには、それぞれの家族が歩んできた歴史があります。
継親が継子の親代わりになることだけが、家族になる方法ではありません。子どもが別居親を大切に思い続けることも、自然なことです。
最初から全員が同じ気持ちで、新しい家族を歓迎できるとは限りません。
だからこそ、それぞれの気持ちや距離感を尊重しながら、時間をかけて関係を築いていく必要があります。
おわりに――足りないものを埋めるより、安心できる関係を育てよう
家族の誰かが寂しさを抱えているとき、その気持ちを否定する必要はありません。
ただし、その寂しさを埋める責任を、ほかの家族の誰か一人に背負わせる必要もありません。
継親には継親の、実親には実親の、そして子どもには子どもの思いがあります。
大切なのは、誰かの欠乏感を満たすために別の誰かが我慢する家族ではなく、お互いの気持ちを尊重しながら安心できる関係を育てていくことです。
家族になるとは、足りないものをすべて埋め合うことではなく、それぞれの違いや不完全さを認めながら、一緒に暮らす方法を見つけていくことなのかもしれませんね。
ステップファミリーの悩みを、一人で抱え込まないために
NPO法人M-STEPでは、子連れ再婚やステップファミリーに関するご相談をお受けしています。継親としての孤独、実親としての葛藤、子どもとの関係など、それぞれの立場を大切にしながら、一緒に考えていきます。
平田えり/NPO法人M-STEP 理事長・カウンセラー


